丘の上の村より

mandu9998このあいだの夏のインド旅行で最後に訪れたのがマンドゥー。デカン高原やや西よりの台地の上にある村で、イスラムの遺跡が点在しているが、風景はもっと素晴らしい。特に雨季は緑が鮮やかで、特に夕暮れなど、夢のような景色が丘に沿って続いている。そんな中を歩いていると、静かに葉っぱを吸っている男が二人。僕を見つけると、「どう?一緒に吸わないか」と誘ってくる。「まだ写真を撮るから」と遠慮したが、うち一人がなかなか絵になるので写真を撮らせてもらった。彼は服装は普通だが、一応サドゥーなのだという。ここが気に入って住み着いているらしい。まあ、聖地でもないから袈裟衣も必要ないということか。誰もが、ぶらっと自然に生きていける空気がこの小さな村にはただよっている。先住民の比率もかなり多いし、いろんな人々が雑居する中で、好きなようにやれば、といった空気が出来上がったのかな、と思う。しかも自然は神々しいまでに美しく雄大、ちまちま働く必要もなさそうだ。インドでは珍しく酒飲みが多い村だが、確かに酒でも飲むなり葉っぱでも吸うなりして、夕暮れをぼ~っと過ごすのがよく似合っている。一瞬、夕暮れの中を走り回って写真を撮っている自分がバカのように思えたが、まあそんなこともないかとあとで思い直した。夕暮れを堪能したのは一緒なわけだし…、写真を見てまた楽しめる。

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雨上がりの川

orcha05aa今日は台風が近づいているようで外は激しい雨。気温も下がり、気持ちいい。インドでも、5月、6月は猛烈に暑いが、雨が降ると突然気温が下がって、晩夏のような雰囲気になる。このあいだ、デカン高原を巡ったときもそうだった。
写真はオルチャ近くの平原を流れるべトワ川。雨上がりの空に太陽が顔を見せ、その光に照らされた川の流れが印象的だった。写真で見るように、かなり増水していて、対岸に渡る橋は水の中に沈んでいる。もしかすると、雨季のあいだじゅう、対岸との行き来は出来ないのかもしれない。
オルチャに滞在中、川遊びをしていた子供が流され行方不明になったと聞いた。でも、それを話した人も含めて村はどこまでも静かで、まるで何事もなかったかのようだ。モンスーンがやってくれば、そんなことは当たり前、といわんばかりで、ときどき、そんな国にいることに恐ろしさを感じることもある。
でも、…恐ろしいと思うからこそ、一時の平穏が、またひときわ穏やかな時間として感じられるのだろうな。そうなことを思いながら、川を眺めていたら、また黒雲がやってきて、激しい雨になった。

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丘の時間

other29aaancient51aa今日もオルチャの丘の写真を二枚アップします。左の写真は、雨を含んだ夏の雲が印象的な午後の空。だんだんに風が湿り気をおびて、そのうちざっと降り出す前あたりの時間も結構良いものだ。
右の写真は、真っ赤な夕暮れがやがて終わり、闇の中に沈んでいく、静かなひと時…。右の建物は今も寺院として生きているので、何本かの旗が風になびいている。ときどき巡礼がやってきて、鐘を打ち鳴らすのを遠くで聞くのはとても風情がある。インドの風情なんてあまり日本では聞かないけど、じつはすごく胸を揺さぶられるものがあり、強い予感に満ち満ちている。
夕暮れの写真を撮り終わり、丘を下っていく途中でまた奇妙なものに出会った。夜の帳が下りつつある道の端で堂々とうんこをするおばさんたち。結構たくさんいて心苦しいが、道は一本しかないので、そのまま歩くしかなかった。遠くからは女の子たちも水がめを持って歩いてきていたので、彼女たちの目的も同じだろうか。そのへんで用を足すのはインドの農村部では当たり前のことで、実は驚くほどでもないが、デカン高原北部から東インドはちょっと露骨すぎて、もう少し隠れてできないものかなあ、と思ってしまう。でもまあ、僕がもっとも心惹かれている地域と重なってしまうのがなんとも微妙な気分…。

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魅惑の丘

orcha04aaorcha03aa前回に続いてオルチャの話題を一つ。前回紹介した建物はじつは宮殿ではなく寺院だそうだ。この寺院から裏手の丘陵を上り下りしながら20分も歩くとチャトリ(墓園)建築群に到着するのだが、そこにいたる道がとても印象的で、ここがインドであることを忘れてしまう。例えるなら、まるでスコットランドかアイルランドの寂しい丘を歩いているような不思議な気分、雨のあとの、ちょっと肌寒い風もとても気持ちいい。人影はあまりなく、ときどき牛や水牛が道を横切っていく。まるで童話の世界に迷い込んだようだ。
丘の上から眺める建物のたたずまいもじつに良い。空の様子に応じて次々と印象を変えていくのは別に当たり前のことではなく、建物自体の神秘的な魅力がなければ印象的なものにはならない。その点、オルチャの建物はどれをとってみても、駄作というものはまったくないし、建物の配置の、バランスの良さが際立っている。まったく伝えられていないようだが、これを作った建築家はすごいセンスの持ち主だったんだろうな。
オルチャを見て思い出したのが、スペインのセゴビアという町。谷をはさんだ丘から眺めると、ディズニーランドのモデルになったという城から、宮殿、そして教会にいたる眺めがとても美しい。この丘の眺めに魅了され、夜に真っ暗な丘を登った記憶があるが、オルチャの美しさはセゴビアの上をいくかもしれない。まあ、どちらが良いかはともかく、二つの遠く離れた街には、どこか同じような美意識が流れていて、それが不思議な気がする。もしかすると、オルチャはインドでもっとも西洋的な美しさを持った街なのかもしれないが、オルチャは純粋なヒンドゥーの街でもあり、建設当時は西洋人の影もないようだから、そのあたりのことは謎である。
ちなみに左の写真、手前の三つの建物が寺院(そのうち一番奥が前回の建物)、後方に見える大建築群が宮殿で、おもに二つの建物からなっている。写真には見えないが、この地点から右遠方にはチャトリ(墓園)の建築群、背後にも、やはり巨大な寺院が一つそびえている。ここは何度歩いても素晴らしい。

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モンスーンミステリー

orcha01ss明日はお盆、ということで、ガンジス川を離れてこんな話題を…。
写真はデカン高原北部の村オルチャ。風光明媚な村と聞いて出かけたのだが、目の前に現れた巨大な宮殿はまさにお化け屋敷。観光客がほとんどいない宮殿は物凄く不気味で、そして美しい。何年か前、スペインとポルトガルの冬を三ヶ月歩いて、不気味な美しさには慣れていたつもりだったが、オルチャは、スペインとポルトガルのどの町よりも印象的だ。とはいえ、これが乾季であれば、それほどでもなかったのかもしれない。オルチャの凄みは、モンスーンの空に立ち込める黒雲の影響によるところが大きい。
オルチャには、写真以外にもいくつも巨大な宮殿があって、それがほとんど補修もされずに放置されている。宮殿内部を歩いていると、通路がすっぽり崩れ落ちていたりと、危険な箇所がいっぱいある。建物内部に通じる細い道は同じ規則の繰り返しとなっている場合が多いから、自分がどこを歩いているのかだんだん分からなくなる。しかも空には立ち込めた雨雲。そして語り継がれる宮殿の悲惨な最期、などなど。ホラー映画のロケにうってつけだが、ちょっと怖すぎるからどうだろう?
それにしても、見れば見るほど恐ろしい。ドラキュラの館みたいだ。

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