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インド 砂漠のジプシーたち

Raja005

少し前にこのブログで紹介させていただいたDVD作品『ザ・ラジャスタン~砂漠の表現者たち』を見た。これは、映像作家のこいでみのるさんが、約一ヶ月間にわたってインドのジプシー(ロマ?)たちを追いかけて撮った作品で、彼らの歌と踊りの映像から構成されている。

というわけで、上の写真も、こいでさんからお借りしたものだ。

さて、その感想を書こうと思ったのだが、硬い文章になるとまるで解説のようになってしまいそうだし、思ったままを気軽に書きたい。

この作品には、珍しい集団の映像もあるようなので、最初、これは記録映像かな、と思ったが、見てみるとそんな感じではない。こいでさんは、たいていは至近距離から、ひとつのカメラで、これを自在に動かしながら、一曲ごとに切れ目のない映像に仕上げている。歌っている人の顔や踊っている人の手や指の表情、楽器の奇妙な動き、そして音楽にあわせて、何かを食べながらリズムをとるジプシーの少女、などなど。

大きな音を出せないので僕はこれをイヤホンで聞いているのだが、演奏者の背後から聞こえてくる誰かの話声や雑音に、ふと耳をすましてしまう。よくは知らないが、こいでさんは自分で音楽もするそうなので、当然、音にはこだわっている。

映像は、ラジャスタンの華やかさを強調したものではなく、逆に、色の彩度を少し落としたようなしぶい色合い。これが20年前とか30年前に作られたと言われても、たぶん、疑問を抱くことはない。僕もこのあたりのジプシーを少し知っているが、彼らの生活は何十年も前から、そんなには変わっていない(ジプシーが携帯を使うシーンで、あれっ、と思うかもしれないが…)。彼らからは土の臭いがするし、こいでさんの作品からは、それをさらに感じる。

感想がたくさんあるのでうまくはまとめられないが、この作品は、正座して聞くような世界ではないと思う。ジプシーの家にいって、胡坐をかいて、飯を食わしてもらいながら音楽を聞いたり、ひどいときには、横になって聞いたりしたこともあるが、これもそんな感じだ。砂漠の夢にひたりながら、ぼんやりと見て、聞くのが楽しそうだ。機材もアナログと撮ったものなので、ハイビジョンテレビではなく、少し画面がざらつく古いアナログテレビが向いているのかもしれない。

作品とは関係のない話になるが、10年ほど前に砂漠の村で10日間過ごしたことがある。電気もない村だったが、夜、食事をしていると、家の主人が闇の中から入ってきて、となりで同じように食事を始めた。しかし、中身が違う。なにか、めちゃくちゃに硬いパン(チャパティー)にかじりついている。

「ピタジー(お父さん)、やわらかいチャパティーもあるよ」と声をかけたが、
「いや~、ワシは子供の頃からこれしか食ってないのでこれがいい」といって、これに野菜汁を適当にかけて、手でパンをぐちゃぐちゃにして、口に放り込んで、あっというまに、懐中電灯も持たずにまた闇の中に消えていった。

なにか、泥でも食ってるんじゃないかと思ったが、これが砂漠の民の普通の姿だ。それで、強風の吹く大地で、器用にマッチを擦り、独特の仕草でタバコ(葉巻)を吸う。サドゥもそうだが、これがまた、なんとも言えずかっこいいのだが、僕らが真似ても様にならない。

こいでさんの作品にも葉巻を吸う男が登場するが、これがまたいい。また、作品の最後に登場するグループはそれまでとは毛色の変わった人たちだったが、これが僕には、盗賊の集団のように思えておもしろかった。まあ、砂漠に盗賊の話は欠かせない。音楽を弾くかたわらで盗賊稼業にも手を染める、なんて世界がちょっと前までは(もしかしたら今でも)、普通に行われていたんじゃないかと思ってしまう。

いずれにしても砂漠にはいろんな人たちがいて、今も自由に旅を続けている。そんな彼らの傍らで、ただカメラを握り締めて、その姿を追いかけるこいでさんの姿が目に浮かんだ。

こいでさんのホームページです。
http://www.spruce-bamboo.com/

また、こいでさんのブログでは 『ザ・ラジャスタン』音楽紀行を連載中です。
http://sisyphe.blog90.fc2.com/blog-category-2.html

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