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サラスヴァティー・ギリとナルマダ・ギリ

Ropway01Ropway02サドゥーは一人身であるのが原則だが、そうじゃないサドゥーもまた多い。ただ、そんなサドゥーの多くはなし崩し的にサドゥーになり(つまり、サドゥーもどき)、そして、なし崩し的に夫婦となって諸国を遍歴する。そういうサドゥーはすでにサドゥーというより、ただの巡礼者のような存在であり、いつしか自分がサドゥーであったことも忘れていく。ただ、サドゥーというのは本来、世間の決まりごとを捨て去った人々だから、別にサドゥーであることの掟なんかを几帳面に守る必要もない。実際、ほかのサドゥーも世間の人々もうるさいことはないも言わない。それがインドのいいところである。

ところで写真のサドゥーだが、これまた夫婦である。ただ、オヤジのほうはいかにもサドゥー然として貫禄もある。いわゆるビックサドゥーであり、ぶらぶらと聖地を歩いていると、狂信者がわざわざ挨拶にやってきたりするのだが、その後ろから、ひょこひょこと、ちょっと猿に似た嫁さんサドゥーがついていくのを見ると、信者たちの多くはなんとなく複雑な表情を浮かべる。このビックサドゥー、名前はサラスヴァティー・ギリという。

サラスヴァティー・ギリと初めて出会ったのは今年一月、ガンジス川河口の聖地でのこと。上半身裸のたくましい後姿を見て、おお、これは怖くても写真を撮らねば、と怒鳴られるのを覚悟しながら声をかけたら、思いがけない笑顔がそこにはあった。さらに、そこへぶらぶらと近寄ってきたのが嫁さんのナルマダ・ギリ。写真を撮り、一緒にお茶を飲んだ。とはいえ、この時はちょっと話した程度だったが、その後、渡した名刺の電話番号に、サラスヴァティー・ギリから何度も電話があった。言葉もあまり通じないから最初は誰かも分からなかったし、だいたい、たいした用事なんか何もない。それに国際電話なんだから料金もばかにならないはずだが、やっぱり変人サドゥーである。ただ、この時は、またインドに行くから、そしたらまた会おう、などと適当なことを話していたら、今回の旅の二日目、ハリドワールというガンジス川沿いの聖地でいきなり再会した。

むこうは多分、これは赤い糸で結ばれているものと思ったらしく、それから二日間、猛暑の中をたっぷり彼らのわがままに付き合わされた。二日目には、町から見える山寺マンサデーヴィーに一緒にロープウェイで登ったのだが、上がそのときの写真。幼稚園生のように喜ぶサラスヴァティー・ギリと、訳の分からないままに、ただ付いてまわるナルマダ・ギリ、サドゥーの人生もいろいろである。

今回帰国してからもサラスヴァティー・ギリから電話があった。デリーからであった。実はハリドワールに来ていたのもデリーに行くためであった。なぜデリーなのかというと、ナルマダ・ギリが体の検査をするためなのだという。その後、彼らの町を訪れたさいに二度、電話をしたが、不在であった。その間、彼らはずっとデリーにいたようだ。電話では詳しいことは質問しなかったが、ちょっと心配である。

サラスヴァティー・ギリからは、その友人を介してメールもあった。僕は返信に、次回の再会場所と時期を記しておいた。僕が行かずとも、いずれ彼らはそこへやってくる。二人そろって元気な姿を見せてくれたら、と願わずにはいられない。

さて、何でこんな話になったのか。そう、サドゥーの人生もさまざま、ということを書こうとしたのだ。サドゥーはサドゥーになった時点で、それまでの人生を捨てたのだから、その捨て去った過去の話を掘り起こす必要もないけど、それで終わったわけではない。その瞬間から再び新たな人生が始まる。

サラスヴァティー・ギリから彼の若かりし時の写真を見せてもらったことがある。写真といっても、それは小さな書物に小さく印刷された不鮮明なもので、情報はたいして得られない。ただ、彼が当時、パワーあふれるビックサドゥーであったことだけは、その粗末な写真からも分かった。もちろんナルマダ・ギリとは出会っていない。当時はインド独立から間もない頃で、サドゥーは今よりずっと神秘的な存在であったのかもしれない。サラスヴァティー・ギリが当時、何を考えていたのかは不明だが、あれから五十年、彼は嫁さんサドゥーと一緒にゴンドラの中で穏やかな笑顔を見せている。なんだか不思議な感じであるが、悪い感じは全然しない。

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コメント

このカテゴリーはまた一段と良かったです。来年インドというのは、ハドワールにってことですね!クンブメーラーはいつから始まるのですか?三ヵ月半続くのなら私も行くチャンスがあるのか!?と興奮してパートナーにアピールしておきました。

ずっとサドゥのお話を聞いてるうちに、段々とどんな感じなのかがわかってきて面白くなってきてます。

サラスヴァティー・ギリ、また出てきた!と思ったら、すっかり愛着が湧いてます。すっごいいいスキッパーの笑顔ですね。ナゼだかガーネットシルクを思い出します。無駄に電話してくるサドゥが可愛いです。

なんだかんだで、かなり感動です・・・。

(サドゥ本かなり観たくなってます・・・。楽しみです!)

投稿: Hana | 2009.08.19 06:01

カテゴリー分けがめちゃくちゃでしょう(笑)。似たようなカテゴリーがたくさんあるし…。自分でもよく分からなくなっています。

そうです。来年、クンブはここハリドワールです。時期は、2月から4月まで。サドゥ大行進がたぶん3回あります。でも、前回とは場所の感じがだいぶ違うので(ちょっと見にくいんですね)、あの動画のようなシチュエーションは難しいかもしれません。ハリドワール自体はとてもいいところですよ。

サラスヴァティー・ギリ、笑顔がかわいいですよ。カミさんのほうは、最初無愛想だったんですが、再会してからは、自分から電話に出てくるようになりました。何を話していいのか、さっぱり分かりませんが(笑)

彼らはハリドワールからバスで上流側10時間のところに住んでいるので、クンブメーラには絶対来ますね。久しぶりに会いたい。


投稿: 柴田 | 2009.08.20 00:12

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